特集 2012年 ベトナム 10大ニュース
1位:日本企業の対ベトナム投資が加速、投資額は1位
日本企業のベトナム投資が加速している。2012年1~9月の新規・追加投資を合わせた外国直接投資(FDI)認可額約95億3000万ドル(約7,390億円)のうち、日本は46億8000万ドル(約3,630億円)と49%を占めて1位の座にある。10月5日付VNエクスプレスが報じた。
日本貿易振興機構(JETRO)の資料によると、日本の対ベトナム投資は2009年に77件と一時的に大きく減少したものの、2011年には208件へと急増した。認可額は2010年以降、毎年18億5000万ドル(約1,430億円)を超えている。1992~2009年(2008年を除く)の平均認可額は5億ドル(約388億円)を下回っていた。
9月にベトナムを訪問した日本商工会議所の岡村正会頭は、日本企業の間に中国に代わる投資先としてベトナムへの関心が高まっているとの認識を示した。また、中小企業が大企業の後追いで海外に進出するのではなく、独自に進出する動きが始まっていると指摘した。これは、最近の現象として日本企業による小規模の投資件数が増えていることと合致している。
東南アジアでベトナムのライバルとされるタイやインドネシアと比べると、ベトナムは2009年には日本企業の投資額が最も少なか
ったが、2012年の現時点ではトップに踊り出ている。
2位:大手民間商業銀行の創業者を逮捕、金融業界に広範な影響、株式市場は暴落
ベトナム公安省犯罪防止調査警察総局は8月20日夜、「経済活動における不正行為」「違法な経営」の疑いで、ベトナム大手の民間商業銀行の一つであるアジアコマーシャル銀行(ACB)の創業者グエン・ドゥック・キエン氏を逮捕した。国内有数の大富豪の逮捕劇は金融業界に衝撃を与えた他、逮捕から3日間でベトナム株式市場の主要インデックスであるVNインデックスが10%下落(1日の値幅制限は±5%)、ACB株が19%下落(同株が上場するハノイ市場の値幅制限は±7%)するなど、その後も軟調な展開が続いている。8月21日付VNエクスプレスなどが報じた。
同行のリー・スアン・ハイ頭取にも任意の事情聴取が求められた。一連の騒動について同行の広報担当者は「今回のキエン氏の逮捕は彼の個人的な活動によるもので、ACBとは一切関わりがない」と強調している。
キエン氏は1964年生まれで、1981年に国防省の軍事技術大学を卒業した後、軍事技術研修でハンガリーに留学。帰国してから8年間はベトナム繊維・衣料総公社(ビナテックス)に勤務し、1994年に友人らとACBを創業した。ACBの取締役を退任した後も、人事委員会およびリスクマネジメント委員会のメンバーに名を連ね
ていたという。
3位:日系企業向け工業団地、続々と誕生
ホーチミン市輸出加工区・工業団地管理委員会(HEPZA)は2012年年初に、裾野産業に特化した日系企業向け工業団地の建設を検討すると発表したが、すでにかなりの案件が具体化してきている。サイゴンタイムズ紙(電子版)が報じた。
N&G投資開発株式会社(N&G Corp)は3月下旬、清水建設とベトナム初の裾野産業団地であるナムハノイ裾野産業団地(HANSSIP)(ハノイ市フースエン郡)の建設に関する協力契約を締結した。清水建設は同案件に約10億ドル(約780億円)を投資する見通し。
ジェスコ・ホールディングスも2011年11月、地場の2社と共同で、日系中小企業向けの工業団地開発事業会社を設立した。この会社は第4ロンハウ工業団地建設案(メコンデルタ地方ロンアン省カンズオック郡)を進めている。工業団地の半分を日系中小企業専用とし、その他に小規模なレンタル工場を用意するなどしてベトナム進出をサポートする。
双日株式会社、大和ハウス工業株式会社、株式会社神鋼環境ソリューションの日系企業3社は2011年8月、現地パートナーであるドンナイ食品農産加工輸出入株式会社(ドナフード社)と共にロンドウック工業団地(東南部ドンナイ省)を設立すると発表した。第1期工事は2012年3月中旬から進められており、2013年中に建設を完成し営業を開始する予定。
円高が進んでいる中で、海外生産は国内生産と比べて効率性が比較的高い。また、人件費の増加などで中国での生産コストが高くなっており、ポスト中国としてベトナムは日系企業の進出先として注目を集めて
いる。
4位:2大都市の最低賃金、2013年より235万ドンに
政府はこのほど、一般労働者の最低賃金引き上げに関する政令第103号/2012/ND-CPを公布した。同政令は2013年1月1日に施行される。詳細は以下の通り。11月5日付VNエコノミーが報じた。
<地域別最低賃金一覧>※対象地域は下記を参照。
第1種:200万ドン(約7,940円)→235万ドン(約9,330円)
第2種:178万ドン(約7,060円)→210万ドン(約8,330円)
第3種:155万ドン(約6,150円)→180万ドン(約7,140円)
第4種:140万ドン(約5,560円)→165万ドン(約6,550円)
これに先立ち、ベトナム労働・傷病兵・社会省は最低賃金の引き上げ案として、第1種(ホーチミン市、ハノイ市など)の最低賃金を250万ドン~270万ドン(約9,920円~約1万710円)とすることを提案していたが、景気低迷などの影響から、引き上げ幅は当初より小幅なものとなった。
※対象地域
◇第1種:ホーチミン市、ハノイ市、東北部クアンニン省、中部ダナン市、東南部ビンズオン省、バリアブンタウ省、ドンナイ省
◇第2種:北部ハイフォン市、紅河デルタ地方ビンフック省、東北部タイグエン省、南中部カインホア省、東南部ビンフオック省、タイニン省、メコンデルタ地方ロンアン省、アンザン省、カントー市、カマウ省
◇第3種:紅河デルタ地方バクニン省、ハイズオン省、フンイエン省、南中部ビンディン省、中部高原地方ザライ省、ダクラク省、ラムドン省、東南部ニントゥアン省、ビントゥアン省、メコンデルタ地方ドンタップ省、ティエンザン省、ビンロン省、ベンチェ省、キエンザン省、ハウザン省、ソクチャン省、バクリエウ省
◇第4種:その他
なお、先に閉幕した国会では、2013年度国家予算が承認され、その一部として公務員の最低賃金を現行の月105万ドン(約4,170円)から2013年7月より115万ドン(約4,630円
)に引き上げることが決定した。
5位:コメ輸出量、ベトナムがタイを抜き世界一に
タイ現地紙のバンコク・ポストによると、2012年年初から10月初めまでのベトナムのコメ輸出量は590万トンとなり、ベトナムはコメ輸出量で世界トップに立った。10月26日付NDHマネーが報じた。
ベトナムに次ぐ2位はインド(560万トン)で、長らくトップの座を維持してきたタイは3位(520万トン)まで後退した。しかし、取引価格の高さにより、売上高ではタイが1位をキープしている。
この報道に対し、タイの商務省は、今後2012年年末までにタイのコメ輸出量は回復し、世界トップの座に返り咲くとの見方を示している。
なお、砕け米5%(混入率)1トン当たりの現在の取引価格は◇タイ米570ドル(約4万5600円)◇ベトナム米490ドル(約3万9200円)◇インド米460ドル(約3万6800円)
となっている。
6位:サムスン電子ベトナムの追加投資、例外的に優遇税制が適用、前例となるか
ベトナム政府はこのほど、韓国サムスン電子のベトナム現地法人、サムスン電子ベトナム(SEV)の追加投資(第2期投資)に対し、優遇税制を適用することを承認した。9月25日付カフェエフが報じた。
SEVは2009年にベトナムで事業を開始した。投資額は6億7000万ドル(約529億円)に上り、これまでベトナム市場の発展に大きく貢献してきた。これを考慮し、政府は例外的に優遇措置を認めた形だ。
SEVは2011年初め、紅河デルタ地方バクニン省の工場を拡張し、2015~2020年の期間中に総額15億ドル(約1,185億円)を投入して「サムスン・コンプレックス」を形成する計画を発表。しかし、この投資に当たり、現行規定では追加投資分に対して新規投資と同様の優遇税制を適用できないという問題が持ち上がっていた。
計画投資省はSEVの追加投資案件がもたらす経済効果を高く評価し、優遇税制を認めるよう政府に提案し、政府はこの提案を受け入れた。さらに政府は2011年、SEVをハイテク企業として認定。これにより、同社の法人所得税は10%
に減税されることになった。
7位:日本政府支援のホーチミン地下鉄1号線が着工、2018年運行予定
ホーチミン市人民委員会は8月28日、ディン・ラ・タン交通運輸相、谷﨑泰明駐ベトナム大使らの参列の下、同市都市鉄道(メトロ=地下鉄)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)の着工式を行った。8月28日付カフェエフが報じた。
タン交通運輸相は同市人民委員会や施工業者などに対し、計画通りに工事を実施し、市内の交通渋滞の緩和と交通事故の低減、市の都市開発や経済社会の発展に貢献するよう求めた。この案件には日本が政府開発援助(ODA)を行っており、谷﨑駐ベトナム大使は「メトロ1号線は市民が利用する交通機関を変える大きなターニングポイントになるだろう」と述べ、着工を祝福した。
メトロ1号線は2018年の運行開始が予定されている。旅客輸送能力は、当初は1日当たり18万6000人だが、2020年には62万人、2040年には102万人まで引き上げられる計画。全長は19.7キロメートルで、ホーチミン市1区、2区、9区、ビンタイン区、トゥードゥック区、東南部ビンズオン省ジアン町を通る。将来的には東南部ドンナイ省ビエンホア市まで延伸される可能性が
ある。
8位:日本のODA案件「ベトナム宇宙センター」が着工
ハノイ市のホアラック ハイテクパーク(HHTP)で9月19日、「ベトナム宇宙センター」が着工された。完成時期は2020年の予定。9月18日付サイゴンタイムズ紙(電子版)が報じた。
日本の国際協力機構(JICA)によると、同案件は面積9ヘクタール、投資総額は540億円で、日本の政府開発援助(ODA)を原資としている。同案件は「2020年までの宇宙科学応用に関する研究戦略」の最重要案件。事業主体はベトナム科学技術研究所傘下の国家衛星センター(VNSC)が務める。
同案件は◇地球観測衛星(2基)の調達◇技術インフラ・設備◇人材育成の主要3事業から成る。またベトナム宇宙センターでは◇小型地球観測衛星の自主開発◇衛星情報を活用した災害および気候変動対策の立案などを行ってい
く。
9位:日本とベトナムの企業、ドンパオ鉱山のレアアース共同開発で覚書調印
ベトナム国営鉱物鉱山公社(VIMICO)傘下のライチャウ・レアアース社と日本のドンパオ・レアアース開発社は5月17日、西北部ライチャウ省タムドゥオン郡ドンパオ鉱山のレアアース共同開発に関する覚書に調印した。5月17日付ベトナムプラスが報じた。
覚書によると、共同開発は2期に分けて実施する。第1期では、年間精鉱生産量1万トンを目標とする「レアアースF3鉱体採掘・加工プロジェクト案」を作成する。第2期では、両社による合弁会社の設立に関する交渉を行う。資本金は総投資額の30%以上を予定している。
ドンパオ鉱床から産出する主なレアアースには、触媒・ガラス・研磨剤として使用されるランタンやセリウム、永久磁石やガラス着色剤として使用されるネオジムなどがある。
グエン・タン・ズン首相と野田佳彦首相は2011年10月31日、ベトナムでレアアースの共同開発を行うことで合意した。
ドンパオ鉱山のレアアース共同開発はこの合意に基づくもの。
10位:日本向け看護師・看護助手選抜プログラムがスタート
ベトナム労働・傷病兵・社会省傘下の海外労働管理局は8月21日、「日本向け看護師・看護助手選抜プログラム」を開始した。ベトナム人看護師・看護助手の受け入れについては、2011年10月に両国首脳間で合意し、11月に覚書が締結された。日本は今後、ベトナムから毎年500人の看護師・看護助手を受け入れることになっている。8月21日付グオイラオドン紙(電子版)が報じた。
選抜プログラムの応募資格は以下の通り。
◇短大・大学の看護学科卒業
◇満35歳未満
◇犯罪歴がない
◇健康上の問題がない
◇2年以上の経験を有する
選抜された候補者は、日本へ行く前に1年間の日本語教育を受ける。日本での受け入れ期間は3~4年の予定で、月給は13万~15万円。なお、滞在期間中に日本当局発行による看護師資格を取得できた場合、
引き続き日本での就労が可能となる。
Nguồn :
https://www.bizbuddy.mufg.jp